相手を選ばないセックスはおなじみの物で、巻島は歪を自覚している己の裸を前に硬くなれるペニスがあるのならなんでも良かった。今日のは兄の友人で、巻島の家で初めて顔をあわせたときにピンときた。―セックスができる。
 自分たちのようなタイプ……と巻島が思っている輩には、大体そういう嗅覚が備わっていて、モラルや愛情の外で性行為ができる人間のことはお互いなんとなくわかるようになっている。案の定、兄の中座の隙に「連絡先を教えて」と耳打ちされたのはその日のうちで、それから3日と経たずに巻島はホテルに赴き、性交をした。
 性器のデカさと、意外にサドっ気が強いのが気に入って、会うのは今日で8回目になる。


「そういえば彼、小野田くん。可愛がってるんでしょ。ああいう幼い感じのがタイプ?」
「レース見に来てたのかァ?暇なやつっショ……。」

 ベッドの上にあげられて、お互いとうに丸裸になっている。慎ましく一枚ずつ服を剥いでいく貞淑さは巻島にはなくて軽く汚れを落としたバスルームから殆ど裸のまま出てくるのが常だ。
長い舌を突き出して根元までずるずると啜ってもらう下品なキス。その合間に待ちきれないように男のペニスに指を絡ませる。そこからオーラルで愛してやるのも巻島は得意だし、我慢が出来なければすぐに大好きなそれを腹の奥に収めようと跨ったっていい。土台セックスを目的に会う約束をしているから、中は既に拓く準備ができている。
腹を満たすためにもう少し、硬さを育てようと擦る巻島の手首を掴まえて咎めるように男が笑った。

「答えになってないよ。ああいうのが好み?」
「いいショ、別に。今そんな話……。」

折角出来あがった体でいるのに、こんな風に唐突に後輩の名前を持ち出されて巻島は熱の下がった目をした。ふてくされて突きだす唇の端にご機嫌伺いのキスが降る。
セックスの最中に日常の、特に学校生活のことを持ち出されるのは巻島は苦手だ。これ以上同じ話題を望んでいない顔をあからさまに、そういうんじゃねぇヨ、と返した声にも剣が混じっていた。

「祐介は女王様タイプだからなぁ…。ああいう手垢のついてない感じの男の子を躾けちゃうのが堪んないとかさぁ。」
「だから違ぇって言ってんショ!」

 ムキになったような声を出してしまったのは、巻島の意図しないところだった。
やけっぱちにホテルの固い枕を掴んで投げつけると、子供っぽい態度に苦笑が返った。

「怒るなよ、祐介。羨ましいんだ。可愛いよな、後輩って。目なんかキラキラさせてお前に憧れてしょうがないって感じだった。なんか。そう、こんな風。『巻島さん!』」
「……。」
「巻島さぁん。……似てる?」
「…オメーそれ、次やったら死刑っショ。」

 しかもそんな似てねェしヨ。高い鼻の先で吐き捨てながら、けれど巻島は小野田の疑いのない犬の目を思い浮かべて勃起していた。性欲は無分別だ。舌打ちをする巻島は誤魔化すように、わざと焦れたふりをして「早く挿入れろヨ」と抱きつくとそれきり、もう今日は口を利かなかった。
きっとあとで自己嫌悪で死にたくなる。無分別な性欲は、過ぎてしまった後には死にたい思いを起こさせて、巻島に嘔吐を催させる。それで、男を先に帰したあと巻島はいつもトイレでひとり吐いてから部屋を出るのだ。それがいつものことだった。

END
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