わたくしは生来、薄情なのでございましょう。少なくともわたくしと血を分けた双子の弟よりはそうなのでございます。幼い頃からわたくしが怪我をすればクダリはよく泣いておりました。勘の良い子でございました。不思議なことにクダリは遠くにいてもわたくしの異変に気が付いて、具合が悪ければむっと黙り込んでばかりのわたくしの代わりに声を上げて痛い痛いと泣くのでした。
「ノボリが痛いと僕も痛い」
白状しますとわたくし自身は、ただの一度もそのように思えたことはございません。わたくしの傷はわたくしのもので、クダリの傷はクダリのものでした。
こんなことがございます。年少の折りのわたくしが家に帰ってまいりますと、家の中はしんと静まり返っておりまして父も母も弟の姿もない部屋の中でわたくしは家族の帰りを待ちました。
あたりがすっかり暗くなった頃に、母が帰ってきてわたくしはクダリが交通事故にあい今夜は病院から帰ってこられないことを聞いたのでございます。わたくしはと言えば、まだ7歳のあの子が小さな体で頭の傷を4針縫う手術に耐えている間、なんの痛みも感じずにお気に入りのアニメなどを見ながらうたた寝をしていたのでございます。情けなくて到底クダリには申し上げられません。
双子のシンクロシニティーと申しましょうか、それを、時折世間から期待されることがございます。共に生まれた片割れの大事をどこにいても知ることが出来る、そういう不思議がわたくしにもあれば良いのですが。分かっております、これというのもわたくしの心がいけないのです。わたくしが、クダリがそうしてくれるようにあの子を己の分身そのものとして思っていたなら。
わたくしは、あの子がわたくしに対して思ってくれているよりは、互いを他人だと感じているのでしょう。それだからこそ、恋など出来たのです。実の血を分けた弟に。
…またひとつ、後ろめたさを白状することとなりました。そうでございます。わたくしは恐ろしい情欲を抱いているのでございます。他人が他人を愛するように実の弟を愛しているのでございます。クダリには申し上げられません。あの子はどんなにか裏切られた心持ちがすることでしょう。クダリは情けの深い子です。天使のように無垢で心の優しい子です。わたくしはあの子にわたくしの薄情が露呈すること、それがとても恐ろしいのでございます。
わたくしは生涯、あの子の痛みを知ることはないでしょう
「ノボリが痛いと僕も痛い」
白状しますとわたくし自身は、ただの一度もそのように思えたことはございません。わたくしの傷はわたくしのもので、クダリの傷はクダリのものでした。
こんなことがございます。年少の折りのわたくしが家に帰ってまいりますと、家の中はしんと静まり返っておりまして父も母も弟の姿もない部屋の中でわたくしは家族の帰りを待ちました。
あたりがすっかり暗くなった頃に、母が帰ってきてわたくしはクダリが交通事故にあい今夜は病院から帰ってこられないことを聞いたのでございます。わたくしはと言えば、まだ7歳のあの子が小さな体で頭の傷を4針縫う手術に耐えている間、なんの痛みも感じずにお気に入りのアニメなどを見ながらうたた寝をしていたのでございます。情けなくて到底クダリには申し上げられません。
双子のシンクロシニティーと申しましょうか、それを、時折世間から期待されることがございます。共に生まれた片割れの大事をどこにいても知ることが出来る、そういう不思議がわたくしにもあれば良いのですが。分かっております、これというのもわたくしの心がいけないのです。わたくしが、クダリがそうしてくれるようにあの子を己の分身そのものとして思っていたなら。
わたくしは、あの子がわたくしに対して思ってくれているよりは、互いを他人だと感じているのでしょう。それだからこそ、恋など出来たのです。実の血を分けた弟に。
…またひとつ、後ろめたさを白状することとなりました。そうでございます。わたくしは恐ろしい情欲を抱いているのでございます。他人が他人を愛するように実の弟を愛しているのでございます。クダリには申し上げられません。あの子はどんなにか裏切られた心持ちがすることでしょう。クダリは情けの深い子です。天使のように無垢で心の優しい子です。わたくしはあの子にわたくしの薄情が露呈すること、それがとても恐ろしいのでございます。
わたくしは生涯、あの子の痛みを知ることはないでしょう
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