花京院ときたら死んでいる癖に何食わぬ顔でベッドに腰掛けては優雅に足なぞ組んでいる。癖の強い前髪も緑の学生服も承太郎のよく知る花京院だ。物珍しい 箇所といえば胸の下からへその辺りまで丸くぽっかり穴が開いているところぐらいだった。

「おい、そいつは一体どうした。」

 承太郎が指差すと花京院はなにを今更というような顔をして自分の腹のあたりを見下ろして、それから「まさか、君は見ていないのか?」と言ったから承太郎 はそれが花京院の死んでいった姿なのを知った。

「見ていない。」
「ふぅん。」

 それじゃあ、もっとよく見てもいいですよ。
花京院がそうのたまうので、さして見たいものとも思わなかったが承太郎はベッドの前に屈み花京院の腹の高さに顔を落とした。そうしてみて驚く。花京院の腹 に空いた穴の向こうにはかつて旅したエジプトの景色が見えるのだ。

「花京院、お前なんて体してんだ?」

 穴に腕を通すと確かに焦げ付くような砂漠の日差しを感じた。蒸し返す空気をかき混ぜるようにゆるく手を掻く。

「背骨に気を付けてくれよ。先が尖って危ないぞ。」

 花京院が神経質そうに注意を促すので、承太郎は制服の袖を引っ掛けないよう慎重を腕を引き抜くと砂漠の奥に目を凝らした。やはり眼前にあるのは確かにほ んの何日か前、歩いて渡ったエジプトの砂漠だ。
 長々と眺めていると花京院は少し退屈した風で組んだ足をもぞ、と動かした。

「承太郎、なにを考えているんだい」
「この向こうに、」
「うん。」
「この向こう側に行ったら、お前が居るんじゃないかと思っただけだぜ。」

 じりじりと焼ける砂漠の地平線を承太郎は睨むようにして見ている。
花京院は呆れたような優しい声を出した。


「馬鹿な承太郎。僕はここに居るじゃないか。」
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